生きた歴史
2021年7月2日
先日、ご高齢の患者さんが来院されました。年齢を感じさせない姿勢の正しさと、はっきりとした受け答えが特徴的な男性の方でした。先の大戦のときに青春を謳歌するご年齢で、それから日本が立ち直るまでの非常に厳しい時代を生きてこられたのです。
私はその方の話に夢中になり、当時の日本の状況とその過酷さを肌で感じたように思いました。本では何度も読んだことがありますし、学校の歴史の授業でも当時のことは教わりました。しかし、読んだり聞いたりするのではなく、実際にその時代を駆け抜けてきた方の、その目で直接見てきた方のお話は、私の心を震わせるのに充分でした。
正直私は平和ボケした日本人です。その方のお話を聞いて、私は日々感謝することを忘れている自分に気づかされたのです。身の危険がなく、食べるものに困らず、友達と会うことだってできる(今はコロナで無理ですが、、、笑)。「普通の暮らし」というのは当たり前ではないんですね。どれだけ幸せで、どれだけ得難いものなのかを痛感しました。
今の時代で、日本という国に生んでくれた親と神様に心から感謝します。今の自分があるのは自分の努力なんかではない。努力させてもらえる環境を与えていただけたのです。当時の日本に生まれていたり、現代でも紛争地域やスラム街に生まれていたら、努力云々の前に死んでいたかもしれない。生きていても今日の食事の心配を、本気でしなくてはならなかったかもしれない。
そして、激動の時代を支えてくださった当時の日本人のおかげで今の日本があります。我々の祖父母世代のすべての方々に心から感謝します。日々の生活では、そういう大事なことをついつい忘れて過ごしてしまいがちですが、「普通の暮らし」の尊さを時々振り返って、感謝して、生きていかなければならないと自分に言い聞かせている今日この頃です。固い話で失礼しました。